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松坂さおりさんのインタビュー表紙

「頑張らなくていい」。森の癒しと楽しさを多くの人へ

前職での部署異動が働き方を見直すきっかけに。祖父への想いと、子どもの頃の原体験から見つけた本当にやりたかったこととは?

Episode01

祖父と過ごした森の中で見つけた「ありのまま」の自分

Q

森に関わる仕事を志すようになったきっかけを教えてください。

A

私は高知県出身で、祖父が木や森、自然が大好きな人だったんです。子どもの頃、よく祖父の家の裏山や川に連れて行ってもらいました。子どもの頃の私にとって、学校や家は正直あまり居心地が良くなくて…。父が警察官で厳しかったですし、塾に行って勉強も頑張らないとと思っていました。でも、森に行くと「何も頑張らなくていい」「ありのままでいいんだ」って思えて、すごく楽だったんですよね。あの感覚が、今も自分の原点になっています。

Q

どんなおじいさまだったのですか?

A

新しいことや面白いことをするのが大好きな、地域のリーダー的な存在でした。手作りの公園をつくったり、実のなる木や花の咲く木を植えて人が集まれる場所にしたり、木工が好きで道の駅でワークショップを開いたり。

今から60年ほど前、「高知の気候ではブドウなんてできない」と周りに言われながら、静岡まで栽培技術を学びに行って、町で初めてブドウ園を始めたのも祖父なんです。祖父が亡くなった後、その畑を母が引き継いでワイナリーを始めました。祖父の生き方そのものが、私の憧れなんです。

Episode02

「森の現場」を求めてコンサルタントの道へ

Q

大学では森林学科に進まれたそうですね。

A

高知県は森林率84%で全国一位なんです。そういう環境で育ったので、大学で何を学びたいか考えたときに森のことしか思い浮かばなくて、森林学科に進学しました。

ただ、大学は人数が多くてフィールドワークの機会があまりなく、森や林業の「現場」がどうなっているのか、実感を持てないまま4年間を終えてしまったんです。

Q

卒業後はどのような進路を選ばれたのですか?

A

現場を知りたいという思いが強くあったので、東京のバイオマスエネルギーのコンサルティング会社に就職しました。全国の自治体を回って、その地域の森林資源をエネルギーとして活用するための計画づくりをお手伝いする仕事でした。

ただ、コンサルの仕事は一つの地域と関われる期間が限られていて、森はそんな短期間では変わらないのに、一つの地域に長く伴走できないもどかしさを感じるようになっていきました。

Episode03

運命の池田町、そして

Q

転機になったのが福井県池田町だったそうですね。

A

コンサル時代に担当した自治体の一つが池田町でした。そのときに出会った役場の方たちがプランを実行に移すための課をつくるという話を聞いて「一緒にやりたい」と思い、転職を決めました。

ちょうど東京暮らしが10年目に入っていて、満員電車や人の多さがずっと苦手で、移住先を探していた時期でもありました。池田町は人口2000人ほどの山あいの町で、移住者にも地元の方にもすごくオープンな雰囲気があって、居心地が良かったんです。

Q

役場ではどんな仕事をされていたのですか?

A

森づくり課では、町有林の管理や町営木工所の運営、それから木質バイオマスボイラーを導入する新庁舎建設プロジェクトなど、幅広く担当させてもらいました。

「森を良くする」を、もっと自分の手でやっていくために

Q

独立を考えたきっかけは何だったのですか?

A

4年目に部署が異動になり、これまでとは正反対の「決まったこと以外はやらなくていい」業務になったんです。自由な発想でゼロから仕組みや関係性をつくることにやりがいを感じてきた自分にとって、この変化は本当に大きなストレスで…。体調を崩してしまったことで、こういう働き方は自分には向いていないと痛感しました。

それと同時に、コンサル時代からずっと感じていた、「計画をつくる仕事」と「実際に森が良くなること」との距離の遠さにも改めて向き合うことになったんです。

地域の課題や森の未来に直接つながっている実感がなかなか持てなくて、もっと自分が関わることで森が良くなったと言えるような仕事がしたいと思うようになりました。

Q

そこで「やまとまち株式会社」を設立されたのですね。

A

仕事で知り合ったデザイナーと木こりの2人が「会社をつくろう」と話していたタイミングで、ちょうど私も退職を考えていることを伝えたら声をかけてもらったんです。

事業の柱は大きく2つで、家具や雑貨などの木製品販売と、森を舞台にした体験・研修コンテンツ事業です。木製品は、それぞれの木工職人さんの強みを生かせるよう、デザイナーが図面を描いて職人さんに依頼する形でつくっています。

Episode04

出産・育児を経て見えてきた、自分の役割

Q

会社の中ではどんな役割を担っているのですか?

A

この2年は出産と育児でフルコミットできなかったこともあり、経理や総務などの裏方に回らせてもらってきました。今後は、もう一つの柱である森のコンテンツ事業を私が中心となって進めていきたいと思っています。

Q

これからやっていきたいことを教えてください。

A

宿泊を組み合わせた「森の体験・研修事業」を構想しています。森を歩き、自然観察をして、その土地でできるプログラムを組み合わせていく内容です。木や植物、生き物をただ眺めるのではなく、「なぜこの木はこう育っているんだろう」「なぜここにこの植物があるんだろう」といった問いを立てながら歩いていく、というイメージです。知ることで、自然への理解がぐっと深くなる。そういう体験を届けたいんです。

Q

さおりさんが森を案内するのですか?

A

私よりも森の植物や生き物に詳しい方はたくさんいます。私が得意なのは、そういう専門家の方たちと「森に触れたい人」をつないだり、場を企画して段取りを組み立てることなんです。だから、私は森の案内人ではなく「森と人をつなぐ人」というほうがしっくりきます。

Episode05

森が人々にとってどんな場所であってほしいですか?

A

子ども時代、森は私にとって心が癒される唯一の場所でした。祖父の家の森で遊んだときに感じた「ありのままでいい」という感覚を多くの人に感じてもらいたいですし、祖父が大切にしていた森や自然を、これからの子どもたちのためにも残していきたいんです。

「やまとまち」という社名には、山と町、そこに暮らす人たちをつなげる存在でありたい、という思いを込めています。たくさんの人に森に来てもらって、自然や木に触れて「気持ちいいね」と感じてもらうことで、森にお金が巡る仕組みをつくっていけたらと考えています。

松坂さおりさんのSNS

@matsu_f_jinen
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